< さ行 >


境橋(さかいばし)

上都と下都を分断する平沙川にかかる五つの橋の通称。文字通り二つの居住区の境目となっており、それぞれに武士十家である浅葱家の武士達がつき警備している。

砂螺(さら)

東大陸の大半を占める砂漠地帯を支配下とする国。西大陸での呼称は『サラクジア』。砂の色合いによって住まう部族が異なり、大元となる白砂漠・青砂漠・赤砂漠・黄砂漠・黒砂漠の五つに、時を経て他部族間との混血により新しく分立した緑砂漠・灰砂漠の二つの部族を加えた七つの支配地区で構成されている。部族によって外見的特徴には幾つか相違点があるが、浅黒い肌に長身、獣のごとき縦に長い瞳というのは共通しており、また個人の名前に関して特殊な習慣を持つ。部族間のいざこざは絶えないが、基本的には白砂漠の民を一応の王≠ニ定め、これに従っている。
砂螺人には特異な体質が備わっており、長所としては砂漠で生きていくための優れた直感力と身体能力、短所としては性的欲求や性的興奮を感じた際に抗いがたい攻撃衝動が湧き上がるという特徴がある。これは互いを生死の境におくことでより生命力の強い子孫を生み出そうという本能的な行動とされているが、黒砂漠の民はこの衝動が特に過剰な為、生まれる数より死の数が勝ってしまう。ゆえに自分達の一族だけでは数が足りぬと他部族の領域を侵して人を攫うようになったせいで、他部族から集中して攻撃を受けるようになった。現在、黒砂漠に留まる部族の者は極めて少数となっている。その一方で『砂螺』を立ち去り、どんな手段を用いてでも子孫を存続させようとする者達もいた。それが後の婆娑羅衆≠フ前身である。

斬月(ざんげつ)

久暁の初名、と同時に禁句でもある。『昇陽』では一般的に斬月という名は男名前として認識されているが、砂螺人にとって月≠ニは暗に女性を指す言葉である。その月≠砂螺人であった金輪翁がつけたからには、当然その意味を込めたと考えるのが定石。つまり久暁にとってこの名は女名前に当たるのである。

式(しき)

神器≠ェ使役する化生の配下。実態は神器≠ェ創造した神器≠フ紛い物。八尺瓊のは全部で十二体存在し、八尺瓊を警護するもの、『都』を偵察するもの、八尺瓊の体調管理をするものなど各々が様々な役割を持つ。特に偵察用と対鉄忌用に作られた式≠ヘ半鉄忌化された状態にある。八佗の式≠ヘ有象・無象という名の二頭の象で、八尺瓊の式≠ルどレベルは高くない。

下都(したのみやこ)

『央都』の中でも貴族以外の平民が暮らす地域をさす名称。封印′繧ヘ動乱期の影響で一時壊滅寸前となったが、それが収まってからは封印¢Oに勝る活気で満ち溢れている。ただし支配権はほぼ五つの自治組織が握っており、彼らが権力抗争を行う為、街はその大半が歓楽街と化している。
五つの党の名はそれぞれ、『桃源楼』『彩牡丹』『睡竜胆』『藍蓮亭』と、『白梅廓』改め『火燐楼』。

称名(しょうめい)

砂螺人の名づけ文化における、成人後に他人から与えられた名の事。いわば称号のようなもので、与えられた者はそれを全て自分の名として扱い、これがどれだけ多いかが砂螺人の一種のステータスとなっている。金輪翁・閻王などがこの称名にあたる。ちなみに金輪翁の称名は全部で五十九、閻王は三十八個ある。現時点で久暁は一つの称名も持ってはいない。名を与える者と与えられた者、双方の認知があって初めて成立する名である為、妖月の赤鬼≠ヘこれに当てはまらないのである。

初名(しょめい)

砂螺人の名づけ文化における、生まれてから最初に親から貰う名前の事。幼名と同じようなものだが、どちらかといえば扱いは称名に近い。初名の名づけは肉親が優先されるのだが、両親が無かった久暁にとっては金輪翁が親代わりであったので、斬月が初名となった。

標持ち(しるしもち)

閻王が儚人のことを指して言う呼称。全身に浮かぶ紋様からその名がついたと思われるが、婆娑羅衆のみが使っていたのか、それとも他国でも通じる呼称なのかは不明。

神器(じんぎ)

王権の象徴であり、国家を守護する道具。多くは起動式を扱う術師として、王≠補佐する形で国の安定を図っている。しかし千年以上もの時間を生きるなど、基本的に人知を超えた存在である。八佗曰く、元は人間であったらしいが……

酔香(すいこう)

酒が希少品となった『都』で、代わりに用いられるようになった嗜好品。樹脂状の香木を鉄燈籠の核で炙り、その香を嗅ぐと飲酒時と同じような酩酊状態に陥る。上都からの配給でしか入手できない高級品で、原材料は鉄忌の体液なのだがそれは皆承知である。本物の酒と比べ効果は弱いものの、久暁が嗅げばたちまち昏倒するのは一緒。

生産域区(せいさんいきく)

下都の外周一帯に広がる、物資の生産を目的として作られた特別地区。『都』の生命線。各党ごとに厳しく監視されており、立ち入るだけでも入念な取調べを受けることになっている。遊廓とは完全に区別されており、生産に従事する者だけが暮らしている。久暁の屋敷もここにあり、彼は『火燐楼』の領域の総監督も担っている。

成名(せいめい)

砂螺人の名づけ文化における、成人後に自らつける名前のこと。やはり自分でつける事で愛着が湧くせいか、砂螺人にとっては数ある名前の中でも一番本名に扱いが近い。

閃鉄筒(せんてつとう)

鉄忌の残骸から作られる武器。強いエネルギーを蓄えた鉄忌の眼球部分を弾として撃ち出す銃。『昇陽』にとっては最重要武器なのだが、完全に扱える者は少なく、殺傷力も充分ではない。

族名(ぞくめい)

砂螺人の名づけ文化における、親の名から貰う名前。順序としては一番初めに並ぶ。苗字のように氏の所属を表すものなので、貰った本人の名前として扱われることはまずない。正式な両親であれば、どちらから貰っても良い。


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